今欲しいもの、すりこぎ。
「ライハ君って本当、生活することが好きだよね」
前の職場で良くしてくれた上司が、よく私にそう言った。
人から言われることって結構貴重なもので、それまで無自覚だったけど、確かに私は生活が好きだ。
お米は冷蔵庫で吸水させると炊いた時に温度差がついて美味しくなるとか、茶渋は4、50度のお湯に溶いた酸素系漂白剤に漬けるとスッキリ落ちるとか、そういう知恵で、暮らしをより良くすることに喜びを覚えるのだ。
料理についても、ここ数年でかなり進歩したように思う。
いや、正確に言うと、「気が抜けた」という方が正しい。
例えば我が家の焼きそばは、キャベツと肉のほかに、ニンジン、玉ねぎ、ピーマンが入っていた。
土日のお昼といったらマルちゃんの焼きそばで、そこに青のりを載せて、一人でほぼ3人前を平らげていた。
それが当たり前だったから、一人暮らしを始めても、その具材は必ずセットだったし、そうであるべきだと思っていた。
でも、ピーマンは半端に残るし、ニンジンは他と比べて火の通りが遅い。
その日の焼きそばは美味しく作れても、残ったピーマンはダメにすることも少なくなかった。
でも考えてみたら、屋台の焼きそばなんて、野菜はこれっぽっちしか入ってないし、セイコーマートのお惣菜なら、具はザンギだけだったりする。
肉とキャベツだけだって良いし、なんなら小松菜やチンゲンサイだっていいのだ。
そういう境地に至った時、片意地を張らないシンプルな料理が出来るようになった。
味付けも塩、こしょう。ちょっとの醤油。出汁と味噌。風味でオリーブオイルやごま油。
そして、にんにくと生姜。
特ににんにくと生姜は本当にすごい。
生のにんにく、生姜を使うだけで、ガーリックソテーだの生姜焼きだのが格段に美味しくなる。
チューブのやつも便利だけど、一度おろしたての味を知ると、もう戻れなくなってしまうほど。
それに、にんにくはバナナみたいに吊るしておけば日持ちするし、生姜も水を張ったタッパーに入れて冷蔵すれば、結構保つのだ。
(※タッパーの水は1、2日で取り替えること)
そうやって日ごろの料理に、小さな喜びを見出して生きている訳で。
そして、今目をつけているのは、「ゴマ」。
擦りたてのゴマの風味って、きっと絶対良いと思う。
旬の青菜を美味しく茹でて、胡麻和えにしたら、絶対美味しい。
パリっと焼けた豚バラに、甘辛いたれとすりゴマたっぷりを纏わせたら、きっと至福。
だから今欲しいもの、それはすりこぎ。
あ、それから鉢も。